11月 7, 2025

告知

中干し延長による生物多様性の影響評価を実施


株式会社Jizoku(本社:東京都国立市、代表取締役:片岡慶一郎、以下、Jizoku)は、(NPO法人オリザネット、農家様)の協力のもと、中干しの延長と生物多様性の関係に関する調査を実施したことをお知らせいたします。

実証実験の背景

Jizokuは、農業分野でのカーボンクレジットの創出支援を行っており、その品質向上に向けた取り組みを進めています。

日本の稲作では、分げつ(茎数)の抑制や根張り強化を目的に、6 月末から7 月頃に水田を一時的に乾かす「中干し」を実施してきました。

近年、この期間を約1 週間延長するだけでメタンを生成する嫌気菌の活動を抑え、温室効果ガス排出を低減できることが報告され、カーボンクレジット創出にもつながる取り組みとして注目されています。

一方で、水面が長く乾くことでオタマジャクシやヤゴなど水田生物に悪影響が及ぶのではないかという懸念が学術界で指摘されており、中干しが生物多様性に与える影響を科学的に評価することが急務となっています。

今回の実証実験について

目的

中干し期間延長という脱炭素策が、水田生物に具体的にどの程度の影響を与えるかを定量的に明らかにし、農業生産と生物多様性保全を両立する最適な水管理モデルを提示することを目指します。

方法

栃木県小山市の水田を対象に、以下の通り調査を実施しました。

1.農業者に依頼し、稲株の必要茎数を確保し、無効分げつを減らせるぎりぎりまで中干し開始時期を延期する。

2.中干し開始前に水田生物を代表するトンボ類の羽化、カエル類の上陸確認調査を行う。

3.慣行で行われている中干し終了日前に、水田内のトンボ類、カエル類などの生息状況を調べる。(このあと中干しを続行し、4につなげる)

4.通常行っている中干し期間をさらに1週間延長して、3の調査を行う。

調査は8–9 時の晴天時を基本とし、畔20 m区間の上陸個体カウントや田面15 分間の採集など、定量的手法を採用しました。6/17(中干し開始前)、6/30(中干し慣行終了直前)、7/10(中干し延長中)の3回にわたって実施しました。

結果

6/17の調査では以下のような結果になりました。

田んぼ1枚目

種名 個体数
ヌマガエル(幼生) 5
ヌマガエル(成体) 1
ニホンアマガエル(成体) 2
アキアカネ(幼虫) 2
シオカラトンボ(幼虫) 1
コガタノミズアブ(幼虫) 1
コミズムシ 6
アメンボ(幼虫) 1
ヒル類 1
ヒメタニシ(殻) 1

田んぼ2枚目

種名 個体数
ヌマガエル(幼生) 5
ヌマガエル(成体) 7
ニホンアマガエル(成体) 6
ニホンアマガエル(幼生) 1
ケシカゲビロアメンボ 3
ヒメタニシ(殻) 2
ヒメタニシ 1

田んぼ3枚目

種名 個体数
ヌマガエル(幼生) 5
ヌマガエル(成体) 2
ニホンアマガエル(幼生) 1
アメンボ(幼虫) 3
カ類(幼虫) 1
ユスリカ(幼虫) 2
ミズダニ類 1
アキアカネ(幼虫) 3
シオカラトンボ(幼虫) 2
ヒメガムシ(幼虫) 1
コガタノミズアブ(幼虫) 2
タマガムシSP(幼虫) 1
ケシカゲビロアメンボ 3

※6/30、7/10の調査結果は省略させていただきます。気になる方はご連絡ください。

3回の結果より、中干し自体による生物個体数の減少は見られるものの、中干し延長によって生物の個体数が激減するといった結果は生じないと言う結果になりました。

ここから、「中干し時期を早めることは生物多様性に対して悪影響を与える可能性があるものの、終了する時期を延長する方向性であれば悪影響は抑えられる」という結論に至りました。

またオリザネットの方々の知見も踏まえ、各地域の生物が孵化・変態を迎える時期を考慮したうえで、中干しの開始時期を若干調整する可能性が示唆されました。

今後の展望

今回の栃木での実証実験を皮切りに、他地域でも同様の調査を展開していくことを展望しております。各地域で得られた結果を基に、水管理と生物多様性のトレードオフを最小化する手法(例:部分湛水区の設定や開始時期調整など)を設計・検証し、最適なモデルを確立していくことを目指します。

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